労災過労死の申請、損害賠償請求は、労働事件専門の京都第一法律事務所へ

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教員(育成学級)のうつ病、再審査請求で、うつ病と公務との因果関係が認められ、公務災害(労災)とされた事例(逆転裁決)

 Mさんは、教員経験年数25年以上にして、育成学級の担任をすることになった。育成学級の担任として、勤務中、生徒に赴任先の初年度に2度、次の年に2度の暴力を振るわれ、4回目の暴力を受けた直後から、体調を一気に崩し、うつ病と診断されました。当該暴力による受傷自体は、3回目までは公務災害と認定されていました。

 Mさんは、自分が精神疾患に罹患したのは、育成学級の生徒に対する指導をしている中で受けた連続した暴力が原因であり、その環境の改善方や児童に対する指導について、上司・校長等に対して、改善を申し入れても取り上げられなかったことを指摘して、公務災害認定申請をしていましたが、「公務外」とされたため、地方公務員災害補償基金支部に不服申立をした事例です(この段階で当職らが代理人となりました)。

 基金支部は、Mさんの別の疾患(私病)があることを理由に、その疾患が公務以上に有力な原因であるから公務外であるとして、何の詳しい根拠も付さず、審査請求も却下しました。

 しかし、そもそも暴力は、それ自体、暴力の程度によっては、民間の労災の精神疾患の場合の基準である心理的負荷表においては、強度Ⅲとされ、それだけで精神疾患を発症すれば、因果関係を認められるものなのに、単に別の疾患があるというだけで因果関係を否定するのはおかしいと考え、基金本部への再審査請求手続きをとることとしました。

 再審査請求手続きでも口頭審理を求め、育成学級と同様の現場を知る現役教員の方にも、口頭意見陳述を行ってもらい、Mさんが担当していた生徒の障害の特性から、十分な周りの支援体制が必要不可欠であるがその支援が得られなかったこと、4つの暴力の連続性は、総合的に判断する必要があることなどを強調しました。結局、再審査請求は認められました。

 「裁決」では、学校現場での困難な課題を抱える場面では、学校全体の支援の必要性も正面から認める画期的なものでした。

 この事例は、当時、民間の事例に比べ、公務災害基金で精神疾患を公務災害(労災)として認定させることが極めて難しいとされていた時期に、これを認めさせたことは、画期的な成果でした。

(本件担当弁護士 糸瀬美保、藤井豊、岩橋多恵)