労災過労死の申請、損害賠償請求は、労働事件専門の京都第一法律事務所へ

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セクシュアルハラスメントによる適応障害

 とある女性は、高校卒業後、某会社に入社。憧れの業種であったこともあり、一生懸命、業務に取り組んでいました。

 ところが、2か月と経たないうちに、人事権を握る上司から個人的な連絡先を教えて欲しいと言われました。入社後間もないこともあり、人間関係でギクシャクしたくなかった彼女はLINEのID交換に応じましたが、そこから執拗に食事やドライブ等に誘われるようになりました。

 彼女は、様々な理由をつけて断り続けていましたが、仕事の話があると言われ、やむなく居酒屋に着いて行かざるを得ない状況となり、そこで事件が起きました。上司は仕事の話もそこそこに、異性の好みや彼女の容姿等の話をはじめ、最終的には彼女に好意を抱いている旨告げ、彼女の足を触る等のセクシュアルハラスメントに及んだのです。

 その日以降、出退勤時も最寄駅や会社の入口で待ち伏せられて行き帰りをともにする羽目になり、無理矢理手を繋がれることもありました。業務中も必要以上に身体を近付けられ、デートに誘われる等して不快な思いをし続けた結果、彼女は入社後1年も経たない内に精神疾患を発症し、休職せざるを得ない状況に追い詰められてしまいました。

 彼女は、半年間休職したところで、会社から「休職期間満了により自然退職にする」と通知され、当事務所に相談に来られました。本件は、上司からわいせつな行為を受けたうえ、執拗に私的な関係を強要されるなどしたことによって心身に不調を生じたものですので、労働災害です。そして、労働基準法上、労災休業中の解雇は制限されているところ、その趣旨からすれば、休職期間満了による自然退職もまた制限されなければなりません。

 そこで、本件休職が労災休業であって自然退職とすることが許されない旨を会社に通知するとともに、彼女や関係者の陳述書、弁護士の意見書を作成し、LINEのやりとりを証拠化したもの等とともに労災申請を行いました。また、居酒屋での身体接触については強制わいせつ罪として刑事告訴しました。

 警察での捜査が進み、上司は残念ながら強制わいせつではなく暴行罪での立件になりましたが、略式起訴のうえ罰金刑が課されたことで、実況見分調書や供述調書等の捜査資料を入手することができ、その内容を労基署にも報告する等した結果、最終的には精神疾患につき労災であるとの認定を受けることができました。

 本件は、(1)加害者が単なる先輩や上司ではなく人事権を握る上司であって、セクシュアルハラスメントを防止しなければならない立場にある人が加害者であること、(2)身体的接触につき加害者が認め、刑事処分が科されたこと、(3)入社後まもない新入社員であって精神的衝撃が大きかったとみられたこと等が影響して、労災認定となりました。

 もっとも、セクシュアルハラスメントによる心身の不調について労災認定を得るためには、身体的接触を含むセクシュアルハラスメントが有ることや、性的な言動が執拗に繰り返されていること等が要求されており、加害者側が事実を否定している場合等、認定を得ることが困難なケースも多いのが現実です。よって、弁護士による適切な証拠の抽出や主張の組み立てが重要になってきますので、職場でのセクシュアルハラスメント等に悩んでいる方は、お早目に弁護士にご相談ください。