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(アスベスト)大阪高裁で、はじめての全員救済・全面勝訴判決を勝ち取る ~建設アスベスト被害賠償請求京都訴訟~
- 担当弁護士
- 村山 晃
大阪高裁で、はじめての全員救済・全面勝訴判決を勝ち取る ~建設アスベスト被害賠償請求京都訴訟~
画期的な高裁判決
2018年8月31日、大阪高等裁判所第4民事部は、関西建設アスベスト京都訴訟の控訴審において、被害者25名全員を救済するという、全面勝訴判決を言い渡しました。被害者らがアスベストに被災したのは国と企業に責任があることを全面的に認め、国と企業を厳しく断罪し損害賠償を命じる画期的な判決でした。
2年半前、京都地裁は、国の責任はもちろんのこと、全国で初めて企業の責任を全面的に認める判決を言い渡しました。この判決が全国の建設アスベスト事件を大きく牽引し、その後、企業責任を認める判決が横浜地裁や東京高裁で相次いで出され企業責任を認める流れを作り出してきました。
はじめての全面勝訴・全員救済
この時の京都地裁判決の大きな問題点は、被害者の半数を占める「一人親方」や「零細事業主」について、国の責任を認めなかったことです。大阪高裁での争いは、京都地裁が全面的に認めた企業責任をしっかりと認めさせることと合わせて、一人親方らに対する国の責任を認めさせること、この二つが最大の課題でした。建築現場では雇用されている労働者も親方として働いている人もたくさんの人が同じように働いており、同じようにアスベスト被害に苦しんでいるからです。
今回の大阪高裁の判決は、私たちが求めてきたすべてについて被害者の主張を明確に認めたのです。私たちが画期的判決と呼ぶ所以です。
一人親方に対する国の責任については、今年3月に東京高裁で、初めてこれを認める判決が言い渡されており、大阪高裁の今回の判断は、2度目の勝利になります。
五本の旗が示した勝利の高さ
判決直後、裁判所の前では集まった多くの支援の人たちの前に
「大阪高裁 全面勝訴」
「国の責任9 たび断罪」
「一人親方も救済」
「建材メーカーを厳しく断罪」
「被害者全員を救済」
という旗が高々と掲げられました。
集まった人々の間からは、「勝ったぞー」「ついにやったー」など大きな歓声があがりました。
全面勝訴判決は、すべての被害者の悲願であり、まさにその悲願が達成された瞬間でした。
建設アスベスト事件の特徴
建設アスベスト事件には次の特徴があります。
第一に、大量のアスベストが長年にわたり建材として使われ、その建材を扱った建築労働者の多くがアスベストに被曝し続けたことです。一時期は、ほとんどの建材にアスベストが入っていました。そして、その結果、建築現場で働いていた人たちがアスベストによる肺がんや中皮腫など重篤な被害を受けたのです。毎年、次々と新しい被害者が生まれています。
第二に、アスベストの有害性は、古くから知られており、1960年頃には、肺がんなどの重篤な疾病を引きおこすことも知られるようになっていました。しかし、国や企業は、これを明らかにせず、現場で働く人たちには、有害で危険な建材であることを明らかにしてこなかったのです。そして、身を守るため防塵マスクを使用させることなどをしてこなかったのです。
第三に、アスベスト被害の特徴は、曝露から発症までに10年から30年という長い年月を要することです。また、建築労働者は、あちらこちらと現場を移ります。曝露した時に異常が出ないことと相まって、どの建材が原因かを明らかにすることが極めて難しいのです。
ここに依拠して企業は責任逃れをするのです。そんなことが許されるはずがありません。
第四に、建築現場では、一人親方や零細事業主など、雇われていない人たちが多数作業に従事しています。その人たちにも労働安全衛生の理念がつらぬかれないといけないのですが、国は、自分たちの責任外だと言って逃げてきているのです。しかし、働いている中身は、雇用されている労働者とまったく変わりません。
国の責任逃れは許されません。差別した取り扱いは認められません。
判決の大きな意義
大阪高裁判決はこれらの点について、企業や国の逃げ得を許さず、再度正面から責任を認めました。危険な製品を作ってきた企業を許さない、そういった私たちのメッセージが届きました。また国は同じ現場で働いている人たちを等しく救済すべきである、というメッセージも届いたのです。
闘いは最高裁へ
私たちは、ただちに国や企業に対して「上告するな」と強く申し入れをしましたが、いずれも上告をしています。私たちも、なお完全な判決内容にさせるということを目的に上告をしました。舞台は、最高裁判所に移ります。すでにこれまでに出された二つの東京高裁判決についても最高裁に上告されており、ともに最高裁で闘っていくこととなりました。
続く二陣訴訟と全国の闘い
そんな中、裁判で追撃すべく次の訴訟が京都地裁で始まっています。2陣訴訟です。被害者本人が毎回法廷で深刻な被害を訴えており、早期の結審と判決を目指しています。そして、全国の中では、9月20日に、同じ関西建設アスベスト訴訟の大阪訴訟の控訴審判決が大阪高等裁判所で再び言い渡されました。こちらも国(一人親方に対するものを含む)・企業に勝利しています。
早期の全面解決を
同時に、私たちが求めているのは、裁判によらない解決です。最高裁判所の判断がされる前でも、国と企業がその気になれば、解決は何時でも可能です。裁判を引き延ばすことほど非人道的な対応もありません。
判決を受けた京都の被害者25名中16名がすでに亡くなっています。解決は待ったなしです。被害者は命をかけて闘っているのです。
今回の判決を大きな力として、アスベスト被害の全面解決へと私たちも力を尽くしたいと思います。これまでのご支援に大きな感謝を申し上げるとともに、より一層のご支援を頂ければと思います。
(当事務所の弁護団:村山、大河原、秋山、谷)