労災・過労死問題Q&A
労災・過労死問題Q&A
労災保険について
Question
労災保険(労働者災害補償保険)とは?
Answer
業務上又は通勤により、労働者が負傷、疾病、障害、死亡した場合に、労働者またはその遺族に対し必要な保険給付を行う制度です。
たとえば、業務中に会社で怪我をした場合、会社が保険料を支払っていなくても、労災保険給付を受けることが可能です。
Question
労災保険の特徴は?
Answer
会社の業務が原因で負傷したり病気になったりした場合は、使用者(勤務先)に対して損害賠償請求をすることが考えられます。しかし、裁判をするとなると手間と時間がかかります。そこで、労働者に有利な制度として、業務上の負傷や病気、死亡であることさえ認定できれば、労働者やその遺族に対して補償が認められるというのが労災保険です。
Question
労災保険の給付の手続きはどのようにするか?
Answer
労災保険の給付は、労働者またはその遺族の請求により行われます。まず、労働基準監督署長に保険給付を申請し、これに対して署長が支給・不支給の決定をします。決定に不服がある場合は、労働者は各都道府県の労災保険審査官に審査請求することができ、さらにその決定に不服があるときは労働保険審査会に再審査を請求できます。これにも不服がある場合は、労働基準監督署長を相手とする決定の取消訴訟を提起できるのが原則です。
Question
労災の種類は?
Answer
労災には業務災害と通勤災害があります。
業務災害とは、労働者が業務上負傷し、疫病にかかり、または死傷した場合をいいます。
通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疫病、障害又は死亡をいいます。
Question
業務災害というためには?
Answer
業務災害というためには、労働者が、労働契約に基づき使用者の支配下にあること(業務遂行性)、並びに、業務と怪我との間に経験則に照らして認められる因果関係が存在すること(業務起因性)が必要です。ここでの使用者の責任は無過失責任とされ、怪我などが労働者の重大な過失によって引き起こされた場合でも使用者は原則として免責されません。
業務災害の具体例としては、労働者が就業時間中に命令された仕事を仕事場で行っていた際に生じた災害、用便や作業に伴う準備行為、後始末中の行為をしていた際の災害などがあります。
Question
通勤災害とは?
Answer
通勤は、
(1)住居と就業の場所との間の往復
(2)就業の場所から他の就業の場所への移動
(3)(1)の往復に先行または後続する住居間の移動を、合理的経済的な経路及び方法により行うものをいいます。
合理的経済的な経路及び方法とは、一般に労働者が用いるものをいい、通常の経路から逸脱した場合には、通勤中とはいえません。
Question
労災補償の内容は?
Answer
保険給付の種類 | どんなときに | 給付の内容 | 特別支給金の内容 | |
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療養(補償)給付 | 業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき | 必要な療養の給付 | ||
業務災害又は通勤災害による傷病により療養するとき | 必要な療養費の全額 | |||
休業(補償)給付 | 業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき | 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額 | 休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額 | |
障害(補償)給付 | 障害(補償)年金 | 業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残ったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から131日分の年金 | (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、342万円から159万円までの一時金 (障害特別年金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の313日分から131日分の年金 |
障害(補償)一時金 | 業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までに該当 する障害が残ったとき | 障害の程度に応じ、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金 | (障害特別支給金) 障害の程度に応じ、65万円から8万円までの一時金 (障害特別一時金) 障害の程度に応じ、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金 |
|
遺族(補償)給付 | 遺族(補償)年金 | 業務災害又は通勤災害により死亡したとき | 遺族の数等に応じ、給付基礎日額の245日分から153日分の年金 | (遺族特別支給金) 遺族の数にかかわらず、一律300万円 (遺族特別年金) 遺族の数等に応じ、算定基礎日額の245日分から153日分の年金 |
遺族(補償)一時金 | (イ)遺族年金を受け得る遺族がいないとき (2)遺族補償年金を受けている方が失権し、かつ、他に遺族年金を受け得る者がない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき |
給付基礎日額の1000日分の一時金(ただし、(2)の場合は、すでに支給した年金の合計額を差し引いた額) | (遺族特別支給金) 遺族の数にかかわらず、一律300万円 (遺族特別一時金) 算定基礎日額の1000日分の一時金(ただし、(2)の場合は、すでに支給した特別年金の合計額を差し引いた額) |
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葬祭料 葬祭給付 |
業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行うとき | 315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分) | ||
傷病(補償)年金 | 業務災害又は通勤災害による傷病が療養 開始後1年6ヶ月を経過した日又は同日後において次の各号のいずれにも該当することとなったとき (1)傷病が治っていないこと (2)傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること |
障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分の年金 | (傷病特別支給金) 障害の程度により114万円から100万円までの一時金 (傷病特別年金) 障害の程度により算定基礎日額の313日分から245日分の年金 |
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介護(補償)給付 | 障害(補償)年金又は傷病(補償)年金受給者のうち第1級の者又は第2級の者(精神神経の障害及び胸腹部臓器の障害の者)であって、現に介護を受けているとき | 常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、104,290円を上限とする)。 ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が56,600円を下回る場合は56,600円。 随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、52,150円を上限とする)。 ただし、親族等により介護を受けており介護費用を支出していないか、支出した額が28,300円を下回る場合は28,300円。 |
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二次健康診断等給付 | 定期健康診断等の結果、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見があるとき | 二次健康診断。 特定保健指導 二次健康診断の結果に基づく医師又は保健師の保健指導 |
Question
労災かと思ったら?
Answer
上記のように、業務上や通勤途中の怪我などについては、労働者に対する補償がなされる場合があります。労災にあたるかの判断、さらにはその先の手続については複雑なので、一度弁護士に相談をしてみてください。