労災過労死の申請、損害賠償請求は、労働事件専門の京都第一法律事務所へ

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大手不動産会社営業職員の過労自殺事件で勝利和解

大手不動産会社営業職員の過労自殺事件で勝利和解

事件の概要

大手不動産会社で営業職として働いていたAさんは、約2年前、パワハラを示唆する遺書を残し、自ら生命を絶ちました。厳しいノルマを課されて毎月100時間前後の長時間残業が続き、上司から厳しく叱責される中で、入社からわずか8ヵ月、まだ30歳をすぎたばかりの、早すぎる死でした。

若い人が身を削る営業職

自動車や保険、不動産や新聞など、営業職として働く人の数は非常に多く、営業職を指す「販売業従事者」の数は、2011年のデータでは892万人とされています(出典:総務省「労働力調査」)。若い人の割合も多く、軽やかなフットワークで日々懸命に働いておられる姿は、私たちもよく目にします。

他方で、「営業の仕事は大変」、「ノルマというシステムが、長時間労働やパワハラを発生させている」という話も聞きます。ノルマが課され、それを達成するために身を粉にして働き、達成状況を同僚と比較され、達成できなければ時に強く叱責され、給料に響いてくる-厳しい労働環境の中で、仕事を続けられなくなってしまう方、精神的に参ってしまう方もおられるようです。

今回の事件は、日本における営業職の労働環境の過酷さを端的に表しているのかもしれません。

異例の早さで出された労災認定

ご遺族の行動は早く、毅然としたものでした。会社に原因究明を求める一方で、当事務所にもすぐに相談にお越し頂き、労災申請に向けた手続きが始まりました。結果的に、この初動の早さと想いの強さが、労災認定と会社からの賠償を勝ち取る要因になったと思います。

会社からパソコンデータ等の資料や叱責の内容についての報告書を提出させ、Aさんの労働時間と仕事の内容をできるだけリアルに再現し、ご遺族の証言もそろえて労災申請に踏み切りました。申請後も労基署と面談して申し入れを行った結果、申請から労災認定まで5ヵ月を切るという異例の早さで認定を得ることができました。

過労自殺の事件においてこれほど短期間で労災認定を勝ち取ることができたのは、非常に画期的なことです。それだけAさんの労働実態の過酷さと、ご遺族の想いが、労基署にも伝わったのではないかと思っています。

会社に正当な補償を求めて

しかし、労災認定が出ても、会社からは何の連絡もありませんでした。そこでご遺族は、引き続き、会社に対して謝罪と正当な補償を求めて行動を起こすことを決意しました。すると会社もようやく重い腰を上げ、労災認定からわずか半年で、非常に高水準の示談解決をすることができました。

営業職の労働環境の改善のために

もちろん、事件が解決してもAさんは戻ってはきません。二度とこのような悲惨な事件が起きないようにするための取組みは、これから始まります。事件が解決したからといって、すべてが終わったわけではないのです。

会社が提出した報告書には、「このようなことが二度と繰り返すことがないよう適正な労務管理を尽くすことが会社の責任であると痛感しています」との文言があります。営業職は会社のために必要な存在ですが、そのために働けなくなってしまっては、ましてや生命が失われることがあっては、元も子もありません。働く人が元気で健康に仕事をできる環境をつくること、それこそがAさんやご遺族への償いであり、会社の責任です。

日本社会から過労死・過労自殺をなくし、営業職の方がより良い環境で働くことができるよう、これからも力を尽くしたいと思います。

[担当弁護士]村山 晃・渡辺 輝人・谷 文彰
2013年2月